日本のモノづくりも、他の国の政策や人件費の変化によって影響を受けます。
時代の変化や経済状況、為替市場などの変動を巧みに感じ取って臨機応変に対応するという面では、超大型の設備投資を必要とする自動車産業は非常に難しい立場に立たされます。
数年間はこのあたりで生産して、その後状況が変わったら他の国で生産するという具合に工場ごと移動することができるわけではありませんし、雇用の問題もあります。
そのような中で、ここにきてトヨタがオーストラリアでの生産にピリオドを打つという決定をしました。
生産拠点の閉鎖という観点からすれば、トヨタの決定の1年前にはアメリカのGMが同様の決定を下しました。
そうなると、一気に失業が増えて大変なことになってしまうと考えるかもしれませんが、そもそもトヨタとGMの撤退を促進したのはオーストラリアの政府にあります。
もちろんそれだけではなく、近年の輸入車との競争激化や、オーストラリアで生産することに伴う高い人件費などが決定を確かなものにしたようです。
そのような現象は日本にとっても対岸の火事ではありません。
日本の場合も近年、輸入車で低価格帯のものが人気となっており、カーオブザイヤーなどを受賞する車も出てきています。
さらに、以前として高い人件費を支払いながら競争に打ち勝って行かなければなりません。
そんな中で、トヨタの国内生産にも柔軟な対応ができるような仕組みや設備投資が目立ってくるようになりました。
たとえば、セントラル自動車の宮城工場では、大きく変動する生産台数に柔軟な対応ができるような設備投資が行なわれています。
この先の世界経済の行方や自動車産業の構造、需要の変化などを正確に予測するのは不可能です。
だからこそ、自動車メーカーも良いものをつくれば売れるという時代から、その都度状況に応じて機敏かつ柔軟に動ける組織力が求められることになります。
ガソリン車からハイブリッド、電気自動車への推移など、ここにきて消費者も各自動車メーカーの経営方針に注目しています。
躍進していくメーカーと衰退していくメーカーがわかれる時代に突入しつつあります。