自動車産業においては、その時代に柔軟な対応をしていくことによって、コスト面でも競争力の高い車を市場に送り出すことができるように工夫を重ねています。
その中において、日本の自動車メーカーも続々と海外生産を強化しています。
また現地で生産することには輸送の面や税制面など、多くのメリットがあるために、わざわざ設備投資をしてまでも海外での生産に乗り出しています。
その中でもいまひときわ注目を集めている国があります。
それがメキシコです。
ここのところを見ても、1年以内にホンダ、日産、マツダが続々と工場を建設しています。
2018年にはこれまでの自動車生産の倍近くの数がメキシコで生産されると予想されています。
数ある国の中でも、メキシコに各自動車メーカーがこぞって工場を建設しているのは、まったくの偶然なのでしょうか。
けっしてそうではありません。
メキシコには他の国にはない大きな強みがあります。
その中でも、メキシコがアメリカやカナダと結んでいる自由貿易協定が挙げられます。
このような協定のおかげで、メキシコで生産した自動車をアメリカやカナダへ輸送する際には、税制面で大きなメリットがあります。
では、わざわざメキシコで自動車を生産してカナダやアメリカに持って行くくらいなら、アメリカで消費される分に関しては現地生産をしても、それなりの販売台数になるのではないかと考えることもできます。
しかし、労働コストの面に注目すると、人件費に関してはメキシコではアメリカの約4分の1のコストで生産することが可能です。
とはいえ、アメリカへの輸出だけを念頭に置いてメキシコでの生産を続けていることには多少のリスクが伴います。
とくに今後は関税撤廃などの交渉の次第によっては、自動車産業は大きな影響を受ける可能性があります。
そのため、各自動車メーカーではメキシコ国内の市場にも目を向けて、国内での新車販売である程度のシェアを獲得することができるように努めています。
日本の自動車メーカーが海外での生産を強化するということは、自動車メーカーに部品を納入している業者にとっても深刻な問題です。
部品メーカーもこぞって現地生産に踏み切る、あるいは現地への移動を考慮しています。
海外での生産には、コストなどでの計算だけではなく、日本から行くスタッフの安全面や言語の面での課題もあります。
とくにメキシコに関しては治安の面で大きな不安があるために、中小企業にとってはとくに現地での生産には及び腰のところも出ています。
今後の動向は何一つ確かなものはないとはいえ、この10年はメキシコに注目しているメーカーが国内外を問わず多くなっています。